漫画「HUNTER×HUNTER」第三巻に登場。解体屋ジョネスの過去を想像で勝手に書きました。念能力を使ったり、原作には登場しない人物が登場したりする予定です。あくまで私の空想によるのもですのでご了承下さい。
心臓を抜かれるということ。
終わりはないと思っていた。
今日も当たり前が繰り返されると思っていた。
「うわぁあぁああ!?」
言い訳をするつもりではないが、別に殺しが好きなわけではない、
肉をつかみ取ることに、生を感じる。ただそれだけなのである。
その過程に「死」があった。ただそれだけなのである。
叫び、もがく運転手のせいで、なかなか進みださないパトカー。
この瞬間も左手の中にある。最後の晩餐を楽しんでいた。
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7月15日
「起きなさい」
母の声がした。
枕元の目覚まし時計を見た。まだ、6時過ぎである。
ジョネス少年は、大きな欠伸をした。何が楽しくて、休日のこんな朝に叩き起こされなくてはならないのかと思う。
「今日は道路愛護があるからよろしく。」
“道路愛護”とは名ばかりで、その実態は、整形外科専門開業医の父の顔を立てるため、自治会が先導するドブ川の清掃を手伝えということである。
ザバン市の中でも、とりわけ年寄りが多く住む地区のため、元気な若者は必要らしい。
今日は、ツイてないそんな気がした。
そんな今朝のことを走馬灯のように思い出しながら、
頭部への鈍い痛みが、ジョネス少年の意識を現在に引き戻した。
やはり今日は、特別にツイていない。
視界が暗転し、身体の感覚が失われた。
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はっと目が覚めた。
ジョネス少年は、起き上がり、辺りを見渡した。
枕元のナースコールで、ここが病院らしいことは分かった。
どうやら『猿も木から落ちる』とは俺の事らしい。
「目が覚めたのね、気分はどう?」
一瞬ぎくりとしたが、ジョネス少年はおくびにも出さなかった。
どこからともなく部屋に入ってきた看護婦は、誰が見ても美人と言うだろう整った顔立ちに、滑らかな黒髪と、平気で人を何人も殺しているような、ダークブルーの瞳が印象的だった。
「脳には特に異常は見られませんでした。」と淡々と現在に至る経緯を説明してくれた。
「君、ボルダリングのインハイ選手らしいじゃない」
彼女は、嘘くさい笑顔で話を続けている。
「ええ、まぁそのつもりだったんですけどね…」
「猿も木から落ちるってまさに君のことね。」
俺は、この女と同じ思考レベルかと愛想笑いをしていると、彼女は、内巻きのショートボブを肩で揺らしながら、病室を後にした。
どことなく似ている彼女のことを思い出していた。
結局、検査などで退院できたのは次の日の午後のことであった。
To Be Continued→